2023年11月8日(水)- プレゼンテーション

スタッフの奥村です。

今回のプレゼンテーションでは、アレクサンダーテクニークでよく使われるlet my neck be freeという言葉の意味を、今の私の視点で考えてみました。

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日本で生まれ日本語で成長してきた私がロンドンで英語でトレーニングを受け、再び日本に戻ってきた。
その体験の中でずっと感じていたモヤモヤした小さな疑問がたくさんあります。
今回はその中でプライマリーコントロールと密接な関連を持つ「let my neck be free」という言葉を中心にプレゼンテーションを構成しました。

①let my neck be free の neckとは
アレクサンダーテクニークのダイレクションの中でも一番よく語られる言葉です。
帰国当初は私自身、「アレクサンダーテクニークは首根っこの解放です」と表現していましたが、それでも自分のワークの中では首と同じくらい、いやむしろそれ以上に「腰」が重要なのではないか?というアイデアをずっと持ち続けていました。

②AO関節ってどこにある?
そういった自分の中の疑問を解消しようと今一度自分の頭と首の関係性を考えたとき、違和感を覚えました。
それはボディマッピングの本の中で、AT関節の位置を確かめる方法を行ってみたときでした。
自分の頭と首で何度実験しても、ボディマッピングの本に書いてある通りにはならなかったのです。

まさか私の頭の形は変なのか?とおもわず美容院で美容師さんに聞いてみたのですが、美容師さん曰く「多少ハチは張っていますが、後頭部にかけては特に気にかかる点はないです」とのこと。
私の頭が毎日日本人の頭の形を見ている日本人の美容師さんから見て気にならない形であるなら、もしかしたら日本人と西洋人の頭蓋骨に違いがあるのでは?と思い調べたところ、日本人と西洋人の頭蓋骨には決定的な違いがあるということがわかったのです!

③身体の重心はどこにある?
頭蓋骨に大きな違いがあり、その結果AO関節の場所も西洋人と日本人にはズレがある。
これを知ったときに、では重心はどうなんだろう?と新たな疑問が。
頭蓋骨の違いがどれだけ直接的に重心に反映されるのかはわからないけれど、やはり日本人と西洋人とでは重心の場所に違いがあるらしいのです。

④名前がなければ認知できない
日本人の私にとってあまりに腰付近に重心があることが当たり前なのと同じように、西洋人のFMには首付近に重心があることが当たり前だった。だからlet my neck be freeだった。
でも。。。
私が出会った数々の西洋人のAT教師は、みんなごく普通に私にワークをし、そして私自身、ワークを受けたどの先生からも十分なbenefitを得ることがあったのです。
では腰の存在は関係ないのか?

この疑問にたどり着いたとき、もしかして言語の問題の影響もあるのか?と新たな疑問がわいてきました。
日本人にとっては腰は身体の要であり、腰の慣用句もとてもたくさんあるのですが、実は英語においては「腰」という概念がとても希薄なのです。
腰は「lower back」、直訳すれば「背中の下部」。そう、英語圏においては腰は背中の一部分でしかないのかもしれない。

言葉によるコミュニケーションにおいて、「名前化」されることはとても大切です。
名前化されていないものに関しては言語を通したコミュニケーションでは理解が進まないのです。
腰に相当する言葉がない英語で約100年前に発展してきたアレクサンダーテクニークでは、「腰」という表現が出てこなかった。でも実際にワークをすれば腰を含めた「頭-首-背中」の全体性の中で言葉にならない「腰」含めて知覚していたのではないか。

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FMアレクサンダーさんがこの21世紀に日本に住んでいたら、アレクサンダーテクニークをどう教えるのでしょうか。
いまとなってはわからないけれど、今生きている私たちが自分たちの経験をシェアしみんなで議論を重ねていくことで今の私たちにとってのアレクサンダーテクニークの理解が進むのかもしれません。

これからもワークをしていくことで見つけていけたらと思います。