お隣の国、 韓国ではアレクサンダーテクニークに対する熱視線が向けられてい ます。
3月下旬にATのワークの為、訪韓する機会があり、 日本におけるATの在り方に一石を投じてくれる体験だったので、 このことについて連載しています。
【韓国の音楽家達とのワークショップ】
今回の韓国滞在で、 私のATワークを全てアレンジしてくださったSooyeonさん の企画力と周囲の人達の熱量が合わさってか、4日間の滞在の間、 観光する時間もなくAT漬けの熱い時間でした。
韓国スポーツ医学学会の講演を終えて昼食をとった後、 ちょうど学会会場の近くで、BTSのコンサートがあり、 道路が渋滞していました。 Sooyeonさんの運転するVolvoが、 そこをするすると掻き分けて次の会場にたどり着きました。
楽器屋さんの屋上階にあるサロン風のバー付きのお部屋で、 11人の音楽家達と一緒にワークしました。英語- ハングル語の通訳の方もついて、 私の意図する雰囲気を上手く伝えてくれていると感じました。
プロからアマチュアまで、 様々な楽器や歌手の混じったグループでしたが、 音楽家としての共通意識を持つことにはあまり困難を感じずに円滑 に進めることができました。
私がロンドンの音楽学校でAT教師をしていた時にも、 複数の韓国人留学生がレッスンに来ていたので、 お国柄は何となく把握しているつもりでしたが、みなさん、 とにかく熱心で、音楽の真髄に触れたい気持ちが強く、 意思の高い傾向は、ここでも見られました。
【音楽家のメインテーマ】
私が、この機会に一番共有したかったことは、 音楽との関係性でした。
音楽家として、音楽を聴く姿勢。内なる音が、 自分の奥深くから生じる。
音楽に向き合うことは、自己の深さを知ることと直結すること。
そして、音楽が表現されることは、「自分」 がありのままに使われていることを意味すること。
たとえ、現状の自分がそれに程遠い状態にあっても、 そこに向かう体験の積み重ねをしていく作業。
こういうプロセスが、 初心者から経験の深い人まで全ての人がお互いを見守り、 促進していくグループ体験。
これが、 とても円滑に進んでいく雰囲気を参加者と作りやすかったのは、 音楽に対する取り組み方の文化環境が寄与していると感じました。
【クラシック音楽の流れと共に】
参加者の中には、韓国固有の音楽家もいて、 西洋音楽を中心に活動している私には未知の歴史背景もあるようで したが、12音階や西洋式の楽譜表記も取り入れられ、 西洋音楽体系の影響もある中で、 共通点を探すプロセスもありました。
例えば、「楽譜を忠実に演奏する」が意味するものは、 楽器や演奏法の発達過程によって、 作曲家の見ている世界が規定されている要素もあり、 やはり歴史的な流行に触れながら、 現代に生きている自分に当てはめる作業に目を向ける取り組みをし ていきました。
2人のピアニストが、ラベルの「水の戯れ」とデュビッシーの「 アラベスク」を演奏した中で、 2つの作品のバッハの影響や当時のフランス音楽の目指していたも のを基礎に見ていくと、「楽譜に忠実」の意味合いが、 その作品から見た世界を共有する体験。
バッハのパルティータのNo. 3のPreludeを演奏している最中に、 基音のEを中心に音が散りばめられている風景を共有することで、 開放弦のEが楽器全体を共鳴させる世界(Bariolage) に巻き込まれていく体験。
こうした音楽体験は、音楽を分析することより、 作品のありのままの世界の奥に身を置くことから生じます。 ATでは、首に無駄な力みが入らないで音楽体験を享受すること。
心と身体が統合されて受け入れる体験。
日々の練習も、 自分と音楽作品がチューニングされる体験を積み重ねることを中心 にしていくことに結びつく体験を増やすことにエネルギーを費やす 方向性。
こうした流れをATの取り組みが促進していることが明らかにされ ていきました。
参加者は皆正直で、自分のプライドに関係なく、 レベルに関係なく、共有する環境を作ってくれました。
参加者達の今後の展開が楽しみなワークショップとなりました。

次回は、 残り2日のAT教師養成学校のクラスについてお話します。